20-8-23開店準備F6
        「開店準備」

生産性を高めるAI・デジタル技術
 AI・デジタル革命が世界の歴史を変えつつあります。今後5年10年先には、生産性(=GDP)が数%という単位でなく、桁違いに伸びるだろうと言われます。産業革命を遥かに超える人類史的な影響が及ぶことでしょう。

 現在AI開発競争でトップを走るのはアメリカと中国です。日本はAI技術では数周遅れの状態です。しかし、今後AI・デジタル技術の産業界への導入が進み、生産性向上に寄与していくことでしょう。その際重要なことは、生産性と人間性のバランスを取る、という課題です。
 AI・デジタル技術で生産性を高めていくには、人間性という「ひと」の要素が決定的に重要な要件になるのです。

「ひと」が重要になる3つのポイント
 「ひと」が重要になる、ということには3つの意味があります。
 第一に、人口減少時代を迎えた日本では労働力不足が生じ、今後「ひと」の価値が相対的に高まることです。「ひと」を労働資源とみなして「使いこなす」時代は完全に終わりました。これからは「労働時間」でなく、「生み出した価値」ベースで給与が決まる時代となるでしょう。希少な人材の能力を高めていくことが求められるのです。

 第二に、AI技術の開発・導入に必要な人材を大量に育成する必要が生じることです。イノベーションを起こす人材、高度なAI技能を持つ人材は不足しており、その育成には時間が掛ります。一時的に海外から技能者を輸入することも考えねばなりません。その間に根本的な教育改革を実施して、創造的な人材、AI・デジタルリテラシーを持つ人材を未来に向けて育成していくことが肝要です。

 第三の意味は、AIデジタル時代には逆に「ヒューマンタッチ」、つまり「ひと」の温かさが求められることです。AIやロボットには出来ない心のこもったサービス。生身のひとでなければ出せない心配りや職人的な技能が希求されるでしょう。生産性の向上は経済的な豊かさをもたらす一方で、精神的な豊かさが奪われることが危惧されます。AIが普及するほどに「人間性」への回帰が広く求められることでしょう。

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 日本の人材育成投資は近年低調なままに推移しています。GDP比率で日本は0.23%(2001~2010年平均)に過ぎず、ドイツ(1.84%)、米国(1.41%)と比べても大きく水を開けられています。 AI・デジタル技術時代に備えて、早急に人材育成に着手していくことが求められます。
 AI・デジタル革命は、明治維新や産業革命にも匹敵するパラダイムシフトであり、生産性を高め、未来を切り拓くために避けて通れない社会的課題です。産業界も、教育界も、社会全体で強い覚悟をもって「人づくり」に取り組んでいただきたいものです。
 
(2020.11.24)

参考
「シン・ニホン」安宅和人 2020年 NewsPicks