18-10-12柘榴F4
 人は食べ過ぎるとメタボリック症候群に陥ります。知識や情報にも同じことが言えます。近代は知識偏重の時代です。知識が多ければ多いほどいい、という「知識信仰」が根強いのです。外山滋比古さんは「知識メタボ」という造語を作って警告しています。

 現代はネット社会であり、知識や情報を得ることが以前に比べて格段に楽になりました。しかし膨大な知識・情報は上手に活用されているでしょうか?情報を持て余し、未消化のまま抱え込む「知識・情報メタボ」状態に陥ってはいないでしょうか?

 外山さんは対策として「忘れる」ことを提言しています。過剰に取り過ぎた知識はどんどん捨て去ることが大事だ、というわけです。脳には常に必要な情報や知識だけをストックしておけばいいのです。でも「忘れる」だけでいいのでしょうか。少し足りない気がします。

 私は「知識メタボ」対策として、「考える」ことの効用を付け加えたいと思います。知識や情報は生ものと同じです。鮮度が高いうちにさっさと料理して使ってしまえばいいのです。それが「考えること」なのです。

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 ここでいう「考える」とは通常よりも広く、アウトプットするという意味を含みます。つまり知識・情報を組み合わせることによりあるテーマの解決方法を導き出し、その結論、つまり「考えたこと」を表現することです。具体的には、例えば考えたことを人に話してみる、文章にしてみる、行動してみるなどが考えられます。

 あるテーマについて調べるとき、私は必ず参考資料を複数読むようにしています。資料となる本を読みながら、気に入った情報があればノートにメモしていきます。最後にメモを読み返し、特に印象深い部分にマークをつけます。

 こうして複数の資料から、自分のテーマに必要な情報が多角的に得られるので、それらをベースにして自分の考えを文章にまとめていけばいいのです。私の場合、友人や知人との会話や、ブログを書くことがアウトプットの場となっています。あるいはセミナーなどで「ネタ話」として情報を使うこともあります。

 インプット(入力)するだけでアウトプット(出力)しなければメタボに陥ります。せっかく得た知識・情報を上手に使うには創造的な作業が必要です。「知識メタボ」にならないためにも、アウトプットすることをお勧めします。

(2018/10/17)

参考図書
「忘却の力」 外山滋比古 みすず書房