生産性を上げる3つの分野
企業の生産性を上げるうえで最も重要な役割を果たすべきキーパーソンはマネジャーです。現場で部下を率いているからです。
マネジャーが生産性を上げる分野は3つあります。
1)社員を育成する
2)チーム力を伸ばす
3)業務プロセスを見直す
ひとつづつ解説していきます。
社員の育成
社員の成長はそのまま生産性の向上に繋がります。社員の能力が伸びれば仕事を少しづつ委譲して、マネジメントの時間を捻出していくことが出来ます。現代は90%の管理職がプレイングマネジャーです。業務に忙殺されていて社員育成の時間が取れない、というジレンマを断ち切って、マネジメントの余裕を作ることを最優先すべきでしょう。
ひとの育成に必要なスキルはふたつ。まずコミュニケーションスキルです。リーダーとして部下である社員と信頼関係を作ることは必須です。相手を認めてしっかり聴き、質問力で自律性を引き出すコミュニケーション力を身につけて下さい。
第二に人材育成のスキルです。ひとの能力とは何か、能力を伸ばすとはどんなことか、行動科学を学べば、能力を効果的に伸ばすための様々な知識をえることができます。
社員の育成については、実践的な場面でのより深い検討が必要です。例えば、若手社員を育てる、シニア社員のやる気を引き出す、ワーキングマザーや介護社員への対応・・・。あるいはハイパフォーマーを育成してイノベーションを起こす法、アベレジパフォーマーの扱い方、など「ひと」の多様性を生産性に結びつけていくことを考えていくことが求められます。
チーム力を強化する
社員を束ねてチームとしての成果を上げることがマネジャーに求められます。そこでは、「私が中心」のリーダーシップではなく、皆を活かす役としての新しいタイプの「リーダー」が求められています。サーバント型リーダー、あるいはコーチ型リーダーと呼ばれます。
チームを一丸とするには、ひとの心に訴えるメッセージ、「ミッション」が有効です。何のために私たちはこの仕事をしているのか。利他の精神に基づく崇高な理想が必要です。リーダーとしてまずミッションを掲げましょう。
先ほどの「社員の育成」は、チームと連動していることが前提です。チームの結果があってこその個人の評価なので、逆ではありません。社員の育成が成功し、マネジャーの指示がなくても自律的に動く「自主運営型」のチームが出来たら最高です。また、特に秀でた能力がある訳でもないアベレジパフォーマーの集団でも、チームとして優れたパフォーマンスを上げることができます。
チームメンバー同士が互いを認め合い、協力し合うチームは最強です。そのための秘訣はマネジャーが弱者にも気を配ることです。チームで一番立場が弱い社員でも自信を持って仕事が出来ている、そんな理想のチームを目指しましょう。
業務プロセスの見直し
生産性を高める重要な方法は「業務プロセスの見直し」です。徹底してムダな仕事を排除することです。敢えて例えると、ビジネスとは有限な時間と人(インプット)を使って高い成果(アウトプット)を上げるゲームです。業務とは人が時間を使ってある仕事をすることです。成果に影響しない仕事は止めることです。
業務見直しのフレームワークとして「ECRS」があります。Eliminate(やめる)、Combine(まとめる)、Rearrange(入れ替える)、Simplify(簡素化する)という4つの基準から業務を徹底的に見直すのです。例えば、無駄な会議をやめる、メールや文書作成にテンプレートを使って簡素化する、・・・など。
これらを駆使していくことで職場の業務プロセスが改善されれば、生産性が上がることでしょう。
業務見直しの過程でITやAIの導入が必要となる場合があります。これに伴ってもっと根本的な今までにない全く新しい業務プロセスが生まれるかもしれません。ビジネスイノベーションを生み出すことも、これからのマネジャーの視野に入れるべきことです。
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業務プロセスの見直しについて、最後に付け加えておきたいことがあります。業務プロセスの目的は生産性の向上ですが、その過程で人間性の問題が関与しています。生産性が向上すれば残業を無くすことが出来、ひとには余暇時間が生まれます。仕事以外の人生を充実させることができるのです。 更にAI(人工知能)の登場で、人間の役割は何か、という新しい課題が生まれます。
現代のマネジャーは、新しい哲学を持つ必要があるようです。
(2020年3月27日)
参考文献
「生産性」 伊賀泰代 2016年ダイヤモンド社
「チームを120%強くするメンタル強化メソッド50」
浮世満理子 2015年 実業之日本社
「プレイングマネジャーの基本」 伊庭正康
2019年 かんき出版