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<ラグビー日本代表で驚いたこと>
 ラグビーW杯が日本で開催されたお陰で、日本でラグビーが脚光を浴びています。特に日本代表チームが強豪国を破った試合がTV中継されたことで、一気にラグビー人気が高まってきた感じです。

 日本代表を見ていて、外国出身の選手が多いことにちょっと驚きました。何と31人中ほぼ半分の15人が外国出身の選手です。日本もいよいよ多様性の時代が始まるのでしょうか。
 出身国はバラバラであるのにメンバー全員が一丸となって相手に突進していくラグビー日本代表チームの姿に、近未来の日本社会の姿が重なって見えた気がしました。
 
 現在、企業のなかで社員の多様化という現象が起きています。かつて高度成長期からバブル期のころは、企業は「男性・正社員中心主義」という単一の価値観でやってこれました。しかし人口減少時代に突入した現在、職場ではパートなど非正規社員はじめ、女性社員、シニア社員、介護を抱えた社員、障害を抱えた社員など様々なタイプの社員が増加してきました。

 もちろん外国人社員も増えています。かつての終身雇用を前提とした大卒一括採用、一律の昇進・昇格制度や人事管理などの日本的経営システムは、制度疲労を起こし、通用しなくなっています。
 
 現場の管理職マネジャーたちは、様々な事情を抱えた社員たちとどう接すればいいのか、どうしたらチームをひとつにできるのか。マネジャーだけでなく、企業にとっても大きな問題です。

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<リーダーは部下に任せてみる>
 ラグビー日本代表をみていると、そこに企業に役立つヒントが埋もれています。まず監督と選手との関係、企業でいうと上司と部下の関係です。ラグビーの監督はゲーム中は選手に細かい指示を出しません。
 そもそもゲーム中は監督はピッチに立てないので指示の出しようもないのです。そこでピッチ上での方針やとっさの判断を決めるリーダーが必要になってきます。しかし試合の展開が早いので、リーダーの指示を待っていると負けてしまいます。ボールを最初に持った選手の動きをみて、全員が一斉に動き出さねばなりません。つまり、全員がリーダーでもあるわけです。

 これを組織に当てはめると、上司であるマネジャーは全体の戦略を立てますが、細かい指示は出さずに部下たちに任せる、ということになります。社員全員に裁量と権限を与えて、自分で随時判断し、自己決定しながら俊敏に行動することができるようにしておく訳です。当然高い自律性が求められます。マネジャーの仕事は、そんな社員を鍛え上げておくことになります。

<チーム一丸にする>
 もうひとつ、マネジャーの大事な仕事は、社員のモチベーションです。ラグビーの監督ならば、選手に、「このチームの目的は勝つことだ」、と宣言するでしょう。日の丸を背負って、この国のために戦って勝利せよ、と言われれば、チームの士気は否応なく高まることでしょう。

 同じようにマネジャーも、社員に対して「このチームの目的は、お客様を通してこの社会に価値を届けることにある!」と宣言してみましょう。社員が働く意味は、お金とか出世だけではないはずです。自分自身の存在を掛けて打ち込むべき価値ある仕事をしたい、と心の奥底で願っているのではないでしょうか。

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<心の壁>
 島国日本の最大の弱点は、内向きで排他的な「島国根性」に陥る傾向があることです。何か新しいことにチャレンジすることが苦手です。「多様性」を受入れていくには、社会的な制度を作ればいいという問題だけではなさそうです。それ以前に、乗り越えるべきひとの心の壁が高く聳えています。

 人口減少と高齢化が進む日本社会の未来にとって、「ひとの多様性」を受け入れることは大きなチャンスです。移民社会になる必要は有りませんが、一定の枠で必要な人材を海外に求めることです。男性中心社会、という枠組みも見直しが進むでしょう。そのほか、あらゆる種類のひとへの「差別」を、ひとつづつ取り除いていく作業。それが「多様性」を受け入れていくプロセスです。

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 完成度の高いチームとは何か。元全日本代表監督の平尾誠二氏は、このチームは誰のものか?という質問をメンバーに投げかけるそうです。「これは私のチームです」とメンバーの全員が答えるチーム。それが完成されたチームである、というのです。

 今回のラグビーW杯の外国出身の日本代表選手たち。一度ある国の代表になったらもう母国の代表にはなれない規則だそうです。背後を断ち切って日本に来る覚悟をした選手たちを、私はどこの国の人であろうと、「ひと」として尊敬したいと思います。

(2019.9.30)