心地よい居場所(税所彰のコーチングエッセイ)

私はマネジメント専門のコーチ。人口減少というメガトレンドの先に見えてくる新たな社会の「心地よい居場所」を探しながらエッセイを綴っています。コーチング、マネジメント、働き方、人材育成のこと、世の中との付き合い方などが主なテーマです。少しでも皆様のヒントになれば幸いです。                                

2018年12月

ひとを突き動かすもの

2015-6碗皿
今年のニュースのなかで最も印象に残る
ひとりの人物がいます。尾畑春夫さん。

山中で迷子になった2歳の子供の捜索で
全国中に不安が広がっているときでした。
忽然と現れて、わずか30分で救出して
一躍脚光を浴びました。

聞けば「人の命は地球より重い」をモットー
に、ボランティア活動で全国を飛び回って
いる方だそうです。

満面の笑顔を見せる元気な78歳。
この青空のような「善」は、一体どこから
来るものなのだろうか、と思いました。

  ◆   ◆   ◆   ◆   ◆

被災地で子供たちからお礼の絵をプレゼント
されて喜ぶ尾畑さんの姿。
ある老夫婦から来た礼状を読みながら、被災
した自分たちよりも、自宅のある大分に戻る
尾畑さんを気遣う下りで絶句してしまう姿。

どうやら、ひととの繋がりや、被災した人々が
尾畑さんに見せる笑顔が、彼の行動のエネルギー
になっているらしいのです。

  ◆   ◆   ◆   ◆   ◆

謝礼は一切受け取らない尾畑さんにとって、
お金や名誉より大事なものがあり、その目的の
ために生きているように見えます。
善、とはそんなものか、と得心します。

誰かの役に立つこと。誰かを喜ばし、笑顔に
すること。
たったそれだけのことが、どれだけ人を幸福
にすることか。
尾畑さんのお陰で、改めて気づきます。

  ◆   ◆   ◆   ◆   ◆

善を行うことを、何か難しいことのように考え
なくていいのだな、と思います。

出来ないことを無理してすることはないのです。
自分に出来る範囲のことを、誰かのためにする。
それはひょっとすると、他の誰でもない自分にしか
出来ないことなのかもしれません。

それが出来て、誰かが笑顔になってくれたら、
きっと自分も幸福な気持ちになることでしょう。

尾畑さんのようなスーパー「聖人」にはなれない
けれども、身の丈範囲で小さな「善」が出来たら
上出来ではないでしょうか。

(2018.12.13)

女性が働きやすい職場

19少女


 「女性活躍推進」が叫ばれています。女性にも
管理職ポストへの道を開く企業も増えてきました。
育児や介護の制度も導入されています。
しかし、女性管理職はなかなか増えません。「育児
離職」もなかなか減りません。
単に制度が導入されただけで、根本の所が
変わっていないからなのではないでしょうか。

 女性の活躍を本当に望むのなら、社会と企業
は本気で取り組まねばなりません。
女性が、「働きやすい」と思う職場作りのことを。

 社会のことはさておき、企業にとって女性社員を
活かすにはどうすべきか、について考えてみたい
と思います。

    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆

 まず女性の働きに対するネガティブな一般の意見を
いくつか拾ってみましょう。

・男性でないと仕事の責任が負えない
・女性の出産・育児休暇があり、他の社員に迷惑
・女性はやさしく大人しいのでサポート業務に向く
・女性は昇進したがらない
・女性は残業したがらない・・

 これらは殆どが「男性優位主義」という旧来の思考
パターンに捉われていることに気づきます。
男性は仕事、女性は家庭(育児)という性別役割分業
の考え方です。

 もうひとつ気づくのが、「生産効率軽視」というべき
日本特有の仕事観です。

    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆

 女性の活躍を阻害するこれら旧来の日本的価値観
は、会社をつぶす危険な「昭和的価値観」であるのかも
しれません。
 逆に言うなら、これらの価値観を覆すところから、新しい
解決の道が開けることでしょう。

(2018.12.8)