心地よい居場所(税所彰のコーチングエッセイ)

私はコーチングの講師。高齢化社会で心地よい居場所を探しながらエッセイを綴っています。働き方・人材育成のこと、世の中との付き合い方などについて考えを深めたい方、年齢に関係なくヒントになれば幸いです。                                  

2018年08月

お盆のころ

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 今年は異に猛暑の夏ですが、立秋を過ぎてお盆のころに
なるとさすがにどこか秋めいた気配が感じられます。
  今年も帰省した子供たちと墓参りを済ませ、その賑やかな
家族も帰ってしまうと、再び老夫婦だけの暮らしに戻り、
一抹の寂しさを感じます。

 テレビで京都の五山の送り火を放映していました。
地元の人々が山に登り薪に点火し、やがて火勢が盛んになる
と夜の闇に文字や形象が鮮やかに浮かび上がります。
京の人々がそれぞれの思いでじっと見守っている。
 その様子を見ていると、先祖の霊が生者と交流するという
「盆」という文化のユニークさ、素晴らしさに改めて感動します。

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 宗教学者の山折哲雄氏が番組で解説していましたが、日本人の生死観は、火山や地震など天災の多い国土環境と無縁ではない、といいます。つい最近も西日本豪雨で多くのひとびとが被災されました。
 それはあらゆる生命、自然のもの、すべて一所に留まる
ことなく「移ろいゆく」ものだ、という「無常観」を基底にしています。生と死は繋がっていくもので、決して別個のものではないのです。

 「無常観」は、自然を排除し、人間を中心に置く西欧的な
近代主義と対照的です。私たちの国は明治維新以降「近代
化」に努め、遂に「豊かな」経済大国と言われる国になりました。
 しかし私たちの国の近代主義は、どうも科学主義、経済主義に偏り、個人を犠牲にし過ぎたのではないか。成長期を過ぎて緩やかに衰退期を迎えている現在、静かな反省が広がりつつあります。

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 科学技術の発達は私たちの暮らしをますます便利にして
くれます。でもそこで大事なことは、人間性を失わないことです。
ロボットやITに何をさせるのか、させるべきでないのか。 
人間らしさとは何か。ひとの幸福とは何か。これは人類の
歴史を通じた永遠のテーマでしょう。
 遺伝子工学、AI技術の進展のなかで、人類としての英知、
深い洞察が問われています。

 日本の伝統的な「生死観」、「無常観」は、自然と人間
のほどよい調和を基本にした観念です。AIに代表される
科学の時代において、私たちが失ってはならない、改めて
見直すべき価値ある観念ではないでしょうか。

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 五山の送り火の火勢もやがて衰え始め、文字や形象が
次第に薄れていきます。移ろいゆくもの、消えゆくものへの
情感を美意識にまで高めたのが古来からの日本の文化でした。

 それは過去に生きたすべての人たち、先祖と呼ばれる無数のひとびとによって綿々と継承されてきたものであり、現代に生きる私たちにこうして届けられた贈り物です。
 そのことを思うとき、何か厳かな気持ちになるのです。

(2018.8.18) 

次の番組と書籍を参考:
NHK BSプレミアム「大中継!にっぽんのお盆」(2018年8月16日放映)

詩人の世界

17-8鶏頭F4

この夏は記録的な猛暑が続いています。
猛暑の中でも、ひとは生きていきます。
前を向いて、進んでいくしかありません。

詩人の谷川俊太郎さんは、自分の生きる座標を求めて
宇宙に行きついてしまった、と言います。
「社会」という煩わしい日常を超えて、辿り着いたのが
宇宙だったという訳です。

詩は日常生活を生きるときの感動を言語を通じて
表現します。その手法が宇宙的である、というのが
「社会」に捉われている私には面白く感じられます。

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詩人から学んだことがあります。

ひとつは「視点」。
詩人は遥か彼方の宇宙に視点を持つ、といいます。
広大な宇宙に視点があると、日常では気づかない
発想や生き方が出来そうです。

もうひとつ、”美しいもの”への鋭い感覚。
画家が絵を通して美を表現するように、詩人は「言葉」を
通して美を語るのです。
”美しいもの”は日常では大した利益をもたらさない
かもしれませんが、美への感動を大事にする人々の
生き方を美しく磨く効用があります。

美しく生きる、という姿勢を谷川俊太郎さんは
教えてくれました。

(2018/8/5)

「詩を書くということ~日常と宇宙と」 
 谷川俊太郎   PHP研究所 2014年