心地よい居場所(税所彰のコーチングエッセイ)

私はコーチングの講師。高齢化社会で心地よい居場所を探しながらエッセイを綴っています。働き方・人材育成のこと、世の中との付き合い方などについて考えを深めたい方、年齢に関係なくヒントになれば幸いです。                                  

2018年07月

「考える力」のつけ方

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 大量情報時代になりました。スマホやタブレットから大量の情報が流れてきます。ネットは便利ですからついネット情報に頼ってしまいがちになります。

 「知る」ということと「考える」ことは違います。情報を知る、つまり知識だけでは価値は生まれないのです。みんな知っている情報だからです。その知識を使って自分の頭で考えて、新しいアイデアを生み出すことが価値なのです。

 ネット情報から知識を得るだけでは、自分で考えていることにはななりません。そんな仕事は近い将来AIが代替してしまうことでしょう。
 自分の頭で考える、ことがこれからますます大事になります。

 「考える」方法について、東大教授の枝川先生が具体的に教えてくれています。以下に概要をまとめてみました。

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 「考える」コツの第一歩は、大量の情報の流れに網を張る、ことです。別の言い方でいうと問題意識を持つ、ということです。ちょっとしたことに疑問を持ち、好奇心を働かせることです。どうしたらもっと良くなるかな?もっと面白くなるかな?と関心の網を張っていると、必要な情報が集まってくるのです。

 第二に、情報を調理する、という発想です。情報は料理でいうと食材にすぎません。情報を抽象化してみたり、いくつかの違う情報を組み合わせたりして、新しいアイデアを創り出すのです。
その過程が「考える」ことになります。

 第三に、上記の「考える」プロセスをクセにしてしまう、つまり自分の習慣にしてしまうことです。
 大量の情報は「流しっぱなし」で構わないのです。しっかり自分の関心の網さえ張ってあれば。
 引っかかった情報を吟味し、抽象化したり結び付けたりしてみる、あるいは視点を変えて眺めてみる、など柔軟に思考を巡らせてみることが新しいアイデアに繋がるのです。

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 ネット社会の今日、下手をすると自分に都合のいい情報しか見ないで、思考が固定化してしまいます。柳川教授はその危険を避けるための「自分で考える」コツを伝授していて、とても参考になります。

 「読書は能動的に情報を求める行為である」、という一文にはとても納得です。ともすれば情報過多に時代に受動的に流されてしまいそうになります。そんなときこそ能動的な姿勢を取り戻すことが大切なのですね。
 
(2018/7/24)

今回紹介したい本
「東大教授が教える知的に考える練習」 柳川範之 
    草思社2018年

社会参加のすすめ

18-6公園通りF4 - コピー

 定年退職後に突入するのは「老年期」という異次元の世界です。 会社や仕事に拘束されることのない定年後こそ、やりたいことをしようと意気込んでみても、ひととおりその「やりたいこと」をやってしまうと、あるとき「毎日が日曜日」状態に陥っていることに気づき呆然としてしまうのです。
 
 ともすれば家に閉じこもりがちになりますが、「濡れ落ち葉」ではないですが配偶者から嫌がられることになりかねません。老人の孤立は避けたいものです。孤立状態は健康にも悪影響があるというデータもあります。
 
 定年後の新しい人生段階にソフトランディングするために、社会参加することをお勧めします。
社会参加とは、老年期にいろいろな形で社会と接点を持つことです。家から外に出て新しい人々に出会い、友人を見つけ、家とは別に自分の「居場所」を作っていくことです。

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 社会参加、といっても様々な形態があります。社会老年学者の片桐恵子さんは社会参加を3つのタイプに分類しています。第一が趣味、スポーツの会、生涯学習への参加など「利己的志向」性が強い「社会参加活動」です。碁とかコーラスとかの趣味のグループに参加することや、「生きがい大学」など学習活動に参加して、自己研鑽を積みながら仲間と交流を愉しむのです。

 第二は就業、起業、NPO参加などの仕事をする「生産的活動」です。シルバー人材などで仕事を見つける、自分の専門能力を生かして「身の丈起業」してみる、あるいはNPOに参加して福祉や街づくりなどに貢献する、などがあります。

そして第三は政治活動に参加する「市民参加活動」です。ボランティア活動、市民活動、政治活動など特定の個人ではなく広く公共性を基調とした活動への参加です。

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 シニアが家を出て「社会参加」するとどんな効用が考えられるでしょうか。まず考えられるのは新しい仲間、友人とのネットワークが出来ることの効果です。個人を中心にした社会関係を円周状に示した図を「コンボイ」と呼びます。高齢になると近しい親族や友人を失うことにより「コンボイ」に含まれる人数は減少していきます。社会参加はそれを補う新しい人との出会いを提供してくれるのです。

 第二に自分の自発性を発揮して行動し結果を生み出すことで生まれる達成感、自己効力感の満足です。仲間と一緒に何かを成し遂げると、また一層幸福感に繋がることでしょう。
  
 そして個人の立場を離れて社会的な視点にたてば、もっと高次元の効果が生まれることに気づきます。社会参加するシニアが増えればその「活動参加における消費という経済効果」が生まれます。また「活動により健康状態が保たれ、医療費や介護費の軽減」する経済効果、ボランティアの増加による質の高い介護・福祉の提供が可能になるのです。
 片桐さんは「シニア個人の成熟が図られることで社会もより円熟する」という正の効果を期待されています。

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 社会参加、とは極めて個人的な問題です。社会参加しない、ということも含めて私たちシニアには多様な選択肢が与えられている、ということを改めて思います。
 これから先は、自分はどんな生き方をしていきたいか、という個人の問題となります。個人の幸福の基準はまさに様々です。自分に合った社会参加の選択をしていきましょう。
 
(2018/7/17)

参考
「サードエイジをどう生きるか」片桐恵子 東京大学出版会 2017年



「孤立老人」にならないために

18-6-19有栖川公園F4
 孤独のひと、というとどこか詩情が感じ
られるかもしれません。ところがどっこい、
「孤独」は健康上の悪影響を及ぼし、うつ病、
認知症、心臓病、血管疾患などあらゆる病気
のリスクを高めることが近年分かってきました。

 「社会的なつながりを持たない人は、持つ
人と比べて早期死亡率が50%高まる」と言わ
れています。
 海外では「孤独」対策への取り組みが始まって
います。イギリスでは今年、政府が「孤独担当相」
を設置して孤独対策に乗り出したほどです。

 日本の老人、特に男性は世界一孤独である、
との指摘がされています。
 日本のシニア男性のうち「友人、同僚、他人と
過ごすことがない」人の割合は16.7%で、アメリカ
4%、スウェーデン1%などと比べて先進国21か国
中で飛びぬけて高い数値なのです。
(OECD2017年調査)
日本の「高齢者の孤独」問題は、ひとごとではあり
ません。

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 老人の孤立を防ぐには、やはり積極的な社会
参加が一番です。友人や知人を見つけ、自分の
「居場所」を見つけることです。
 しかし男性シニアの社会参加を妨げる要因が
あります。それは男性特有の気質や精神的内面
に関わる要因であり、ひと言でいうならひととひと
との関係を作るコミュニケーションに関わる要因です。

 ボランティア参加にしても、女性たちはおしゃべりを
楽しみながら自然に共同作業ができますが、男性は
プライドを意識しすぎて、なかなかグループ活動に
参加できないのです。

 男性は「男らしさ」に捉われ過ぎているかもしれま
せん。侍文化の影響で「男は多弁」は嫌われる伝統
があります。しかもサラリーマン社会は典型的なタテ
社会で、多言を必要としない「忖度・腹芸文化」のなか
にどっぷりと浸かってきたわけです。
 社内では通用した「コミュニケーション力」も、会社
を離れた定年後に、社会参加しようとしても全く役に
立たないのです。

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 定年後に新しい友人を作っていくために必要なのは、
やはりコミュニケーション力です。「人生100年時代」
では老後は20年~40年も続く長い人生ステージです。
 今までの友人関係だけでは賞味期限が来ているかも
しれません。新しい活動を始めるには、どうしても
新しい仲間作りが必要になるのです。

 コミュニケーション力は天性の才能ではありません。
練習によって誰でも獲得できるスキルです。
 コミュニケーションコンサルタントの岡本純子さんに
よれば、コツは「あいうえお・五つのステップ」だそうです。
・あ 「あいさつ」をする ・・・自分から心を開く
・い 「いいね」と相手をよくホメる 
       ・・・すぐダメ出ししない!
・う 「うん、そうだね」と耳を傾ける 
       ・・・相手の話をじっくり聴く
・え 「えがお」を見せる ・・・笑顔はひとを幸福にする
・お 「お礼」をいう  ・・・感謝の言葉を大切に 
 
 覚えやすいコツですね。

(2018.7.9)

参考資料
「世界一孤独な日本のオジサン」岡本純子 
                  2018年角川新書

定年退職者の居場所

1992ちゃわん屋F20津和野
ちゃわん屋  田中 ミサ

 毎朝散歩に出るのを日課にしています。1日1万
歩を歩く目標です。時おり公園脇にあるカフェKに
立ち寄ります。

 ここのコーヒーはすっきりした味わいがあって
おいしいのです。ここに立ち寄る理由は実はもう
ひとつあります。品の良い初老の店主との会話が
絶妙で楽しいのです。カフェKは私の大切な「居場所」
のひとつなのです。 

 多くの定年退職者にとって、必要なこと。それは
家以外に「居場所」を持つことでしょう。家に一日中
居ては、いくら仲の良い夫婦でも互いに息が詰まり
ます。定年後は家以外に出かけていく場所、寛げる
場所、他者と出会って交流ができる場所。そんな
「心の居場所」を複数持つことをお勧めします。

 図書館、公園、カフェ、など個人でゆっくり過ごせる
公共の場もいい居場所ですし、囲碁や絵画などの
趣味の会や、同窓会、地域活動などもいいですね。
 個人事業を起業している方も居場所が出来ます。
事業を通して、いろいろな人々と関わる場が生まれる
からです。

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 こうした居場所のことを、「家庭」、「職場」に次ぐ
第三の居場所、という意味で「サードプレイス」と 
呼んだのが、アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグ
です。

 パリのカフェ、ドイツのビアガーデン、アラビアの
コーヒーハウス、など、都市の中での”くつろぎの場”
はどこの国にもあります。市民が、特別な目的もなしに
皆で楽しい時を過ごせる、インフォーマルで公共的な
場を「サードプレイス」と定義しています。
 私の考える「居場所」は、オルデンバーグの定義より
少し広めで、地域活動やNPOへの活動の場も含めたい
と思います。

 「サードプレイス」は産業社会や家族制度のストレスを
軽減し、個人の人生への満足感の向上に貢献している
と言えるでしょう。

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 心おきなく語れる友人、年齢に関係なく付き合える
人々が周囲にいてくれることは、特に定年後において
人生を間違いなく豊かなものにしてくれるでしょう。
それを実現していく場が「サードプレイス」である居場所
なのです。「サードプレイス」がもっと注目されてもいいと
思います。

 残念ながら海外と比べると、日本はNPO活動などが
非常に低調で、「サードプレイス」が未発達だと言われて
います。 それが日本の高齢者の孤独問題の根本原因
である、とさえ指摘する研究者もいるほどです。

 社会的な視点からみて、「サードプレイス」をこれから
公的な場所にどんどん増やしていくことが課題となる
でしょう。公園や図書館だけでなく、もっと新たな居場所
を開発して作っていくべきです。
 一方で、私たちは個人の立場から、自分の居場所を
積極的に探し出し、楽しい仲間を見出していきたい
ものです。

(2018.7.5)

参考図書:「サードプレイス」 レイ・オルデンバーグ 
       忠平美幸訳 2013年みすず書房

定年後の健康管理

18-5-25バラ園F4

 体力維持のために何か運動をしようと思い立ち、K市で
開催している「シェイプアップ運動」に参加しました。

 血管年齢が実年齢よりも4歳ほど上の数値であると機械
に教えられ、ちょっとショックです。もっとバランスの
取れた食事や毎日の運動が必要なようです。

 私のBMIは21という数値で、いわゆるメタボではありま
せん。私が感じているのは、体力不足です。
毎週プールで泳いでいるのですが、600メータ-ー位まで
で疲れ切ってしまうのです。ここ2年程、記録はまったく
伸びていません。夢は千メーターを軽く泳ぎ切ることです。

 担当のSさん(女性)にアドバイスされたのは、特に筋肉
トレーニングです。筋力をつければスタミナが生まれる
とのことです。早速運動を生活に取り入れようを思います。

 筋トレといっても4種類の運動だけです。それぞれ10回
づつ行えばいいのです。これなら10分位でできるので
簡単です。テキストには1日擱きでもいいとありますが、
Sさんは筋トレを毎日、朝晩2セットやって下さい、と厳しい
アドバイス。

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 翌日、早速実行しようと朝の散歩にでかけました。
近くの公共施設の広場を目指します。往復5千歩が
目標です。梅雨明けですが、暑くなく気持ち良い風が
吹いています。広場でストレッチし、ラジオ体操をして家
に戻りました。

 途中でいろいろな人に出会います。駅に急ぐサラリーマン
たち。学校に行く小学生、高校生たち。観光バスが2台
止まっているので、運転手に聞くと、今日は会津までの
ツアーだそうです。

 朝の街は空気が新鮮に感じられます。家に戻ってから
の朝食は、家内との話も弾み、いつもと一味違う感覚
でした。
 運動を取り入れると、心も軽やかになるし、生活にリズム
ができるという予期せぬおまけもついてくるようです。

(2018/7/4)