P5070157

アンドリュー・ワイエス。言わずと知れたアメリカを
代表する画家です。学生時代に北の丸の近代美術館で
彼の展覧会を見て以来、私の憧れです。

久しぶりに彼の画集を手に取りました。多くは水彩画
ですが、油絵のような力強さがあります。

例えば「King Post」という作品。広大な牧場と灰色の空を
背景に球体を乗せた柱を持つ真白い柵。
荒々しいタッチと繊細な感覚が入り乱れたリアルな存在
感に圧倒されます。
メーン州にある妻の父親の牧場だという解説があります。

ワイエスは生涯ペンシルベニアの片田舎に住み続けまし
たが、自らが住む身近な世界を好んで題材にして描いた
ことで知られています。

彼の生活する範囲で目に映る景色。彼が接する人々・・・。
決して特別ではないもの、一見平凡と思われるものの中
にも彼は美を見出しては描き続けたのです。
ワイエスの絵画は、自分の住む世界を表現する喜びを
伝えているように思えます。

ワイエスの絵画から受けるメッセージはひとつ。

あなたはあなたの世界を描けばいい

ということです。

私も私の世界を描きたいものです。
現在住む町、その周辺の山河。大切な人々のこと。遠い国
で過ごした過去の記憶でも構わないでしょう。
ちょっとした美や幸福感を見いだせたら絵は描けるはずです。それらすべてが私の世界であり、私が美しいと思うものだからなのです。

ワイエスの絵画から改めて教えられました。
絵を描く原点はそこにあるように思います。

(2018.5.7)