1992ちゃわん屋F20津和野

 この秋、和紙絵作家田中ミサの遺作展を開催しました。
昨年末に逝去した母の遺品整理を半年続けていて、最後
に50点余りの和紙絵の作品が残りました。悩んだ末相談
した画家のC氏から、ぜひ遺作展をしなさい、と勧められた
のです。素晴らしいアドバイスでした。

 川越市内のギャラリーは4日間、母がお世話になった市の
美術協会の方々、和紙絵の関係者、昔のお弟子さんたち、
私の兄弟、親族、知人などで大いに賑わいました。
 市の美術協会の会長さんの来訪は驚きましたが、市長
さんがご夫妻で現れたのにはびっくりでした。特に奥様が
美術の愛好家とのことで、堪能して頂けたようでした。

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 和紙絵は製作に手間がかかるアートです。特に母の流儀
は材料の白い和紙を京染の染料で染める処から始まるもの
です。
 そして何枚も薄い和紙を貼り重ねながら色の濃淡を出し、
鉄筆やカッターナイフで柔らかな線、シャープな線を出して
造形していくのです。 この工程のことは、母の後会長職を
継がれたMさんから今回改めて伺いました。

 風景画はどれも穏やかな空気に包まれていて、見る者の
心を優しくしてくれます。
 藁葺屋根の農家が見える田園風景(「冬日」など)。森の
なかにぽっかりと広がる陽のあたるスポット(「春蝉」)。
外国の公園に置かれた誰も座っていないベンチ(「緑風」)
・・・

 温かい作者の心が伝わってくる気がする作品ばかりです。
 一枚一枚に母がどれだけの時間と労力を掛けて作り上げた
のかを思うと胸が熱くなります。

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 私の絵画の先輩や仲間からも母の和紙絵は素晴らしいと
お褒め頂きました。構図がしっかりしている、と言って下さ
います。ありがたいことです。

 おや、と思ったのは、何人かの方に私の水彩画の雰囲気
と似ていると言われたことです。母の和紙絵の持つ重厚感
には私の水彩画は圧倒されるだけですが、比較してみると
確かに絵の明るさなど共通する所がある気もします。
 身近で暮らすひとほど、普段は客観的に眺めることなく過
ごしているものなのだと改めて思います。

 母の作品の多くは地域にある病院や介護施設に寄贈させて頂くことになります。 私どもとしてはこれらの施設に飾られることで、多くの人々の心を癒すことに役立ってくれることを願っています。
 そのことをきっと母も喜んでくれることと思います。

 
(2017/10/6)