2015-10-16南瓜②

 先日90歳になった母親の誕生日をあるレストランで
祝いました。長年「貼り絵」の師匠をしてきた母でしたが、
数年前に役職をリタイアして現在は自宅で静かなひとり
暮らしを楽しんでいます。

 90年間というと1世紀近い長い時間です。母の半生を
まとめてみようと思い、年表を作成して母に贈りました。
かつて母自身から聴き取った話や、アルバムなどから
調べた出来事を年ごとにまとめたものです。世相も交え
ながらまとめてA4サイズの紙でちょうど3枚になりました。
本人は受け取ると、フフーン、という他人事のような表情で
眺めています。

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 大正生まれの母の人生の初期には、やはり戦争の影が
色濃く影を落としています。やがて戦後の復興期を迎えて
父と結婚し、私たち3人の子供を育てるころには世の中は
高度成長期を迎えていました。
母は、やはりこの子育て期が一番思い出深い、と言います。

 50代で父を亡くしてからの母は、それまでに趣味で始めて
いた「貼り絵」に一層邁進するようになりました。会の仲間たち
と温泉や山歩きにも積極的に出かけるようになりました。
ひとりでどう生きるか、母なりにいろいろ試行錯誤を重ねたの
でしょうか。

 60代からは「貼り絵」の会の会長として毎年展覧会を開催
したり、各地の支部会員の指導をしたりと多忙であったようです。
海外旅行も頻繁に出かけています。84歳のときそれまでの作品
を集めて個展を開催しました。各地から駆け付けたお弟子さん
たちはじめ、大勢の方々が見に訪れて大変な盛況でした。

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 母の年表から思ったこと。それは時代や状況に合わせつつ
柔軟にたくましく生きる母の能力です。大陸からの引揚げ者で
あった母は、悲惨な体験を引きずることなく、戦後は父という
伴侶を得て、京都という新しい土地で新生活をスタートさせて
います。
 父を亡くした際も、「貼り絵」という打ち込めるものを見出し、
仲間と積極的に活動し、結果的に早期に立ち直ることができました。
ついでに老後という人生ステージに対応した生き方を確立できた
と思います。

 何事にも拘泥しすぎず「さらりと」受け流し、一方で自分を抑え
すぎることなくしかし「ちゃっかり」と自分の得たいものを得ている。
これが母という人物の魅力であり人柄です。
それは生まれつきの個性であり、長い時代の風雪に耐えるなかで
陶冶されたものなのでしょう。
90歳を過ぎたこれからも、飄々として人生を楽しんで欲しいものです。

 人生の先輩として、母の生き方からは、まだまだ学ぶものがあります。

(2014.10.2)