アリス・ウォータースさんという方をご存知でしょうか? 
カリフォルニアにあるフランス料理店「シェ・パニーズ」の              
オーナーですが、食べ物を大切にするスローライフの提唱
者として有名な方です。

今年70歳になる女性ですが、ちょうど料理に興味を持ち始め
ていた私は、「アリスのおいしい革命」を読んで、その若々しい
発想と行動力にとても強い印象を受けました。

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彼女の提唱は「食事を大切にして人生を豊かに暮らそう」と
いうものです。それは9つの原則としてまとめられています。

「料理はシンプルに」
「庭にハーブや野菜を植えよう」
「旬のものを食べよう」
「環境に配慮された食べ物を食べよう」
・・・などとどれも実用的で分かりやすいものです。

なかでも、
「みんなで一緒に料理しよう」
「みんなで一緒に食べよう」
という提言には、はっとさせられました。
食事というものの本質について、ひとと喜びを分かち合う
という視点を見落としていたことに気づいたのです。

現代は時間に追われて、食事はレトルト、インスタントもの
で済ます家庭が大半です。
基本的な食事の楽しさ、大切さが忘れ去られているのです。
家族や友人との日常の食事を大切にしよう、という提言は
ある意味で「現代文明」への挑戦でもあります。

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食の提言以上にアリスさんに感銘を受けたのは、彼女が
人生を豊かに生きている、ということでした。

アリスさんがフランス文学を学ぶ学生だったとき、時代は
ベトナム戦争反対に端を発した学園紛争の嵐が吹き荒れ
ていました。 
留学先のフランスで食の文化に触れ、食文化によって世界
を変えることができるのでは、と思い始めたのです。

帰国後に仲間と始めたレストランが「シェ・パニーズ」という
レストランでした。オーガニックで新鮮な食材を使い、何よりも
親しい人たちと食事する楽しさを分かち合う、というコンセプト
は、スローフードの原点になりました。
それは無理解や偏見を乗り越えながら徐々に全米中に
受け入れられていったのです。


自分が信じたことを実行してみる。それは勇気を要すること
だったことでしょう。それ以外の選択肢をすべて捨てることを
意味するのですから。
私がアリスさんの生き方に羨望するのは、その「潔い」人生観
です。

自分が正しいと思ったらそれを強く信じること。そして信じた道
を何があっても勇気を持って進み続けること。
これが彼女から学ぶべき「豊かな人生」のレシピです。

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何でもやりたがり屋である私は、さっそくフレンチの料理本を
買ってきて、キッチンで料理をしています。自分の食べるもの
くらい自分で作れるようになりたい、という気分です。
タイムやチャイブといったハーブを買ってきて、ベランダガーデ
二ングも始めました。オムレツや魚料理などに添えると、いい
香りで料理がグンとレベルアップした感じになりますね。

「食べるひと」から「作るひと」へ、私のなかでちょっとした「革命」
が起きているのです。
我が家の奥様はとても協力的で、いろいろコツを伝授してくれます。
いつまで続くことやら、と期待と心配が半々で見守ってくれて
いる様子なのですが・・・。

料理をおいしく作ることの喜びが分かるようになりました。
やはりそこにひとが介在しているのですね。
奥さんが作る料理も、心から「おいしい!」と思えます。
子どもたちが今度我が家に遊びに来たとき、ぜひ
「Cook together」をしてみたいものだ、と夢見ています。


参考
「アリスのおいしい革命」NHKエンタプライズ取材班 2013年