心地よい居場所(税所彰のコーチングエッセイ)

私はコーチングの講師。高齢化社会で心地よい居場所を探しながらエッセイを綴っています。働き方・人材育成のこと、世の中との付き合い方などについて考えを深めたい方、年齢に関係なくヒントになれば幸いです。                                  

部下を上下関係でみない

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 憧れ 

部下がなかなか思うように動いてくれない、という
声が聞かれます。春を迎えて新入社員を迎える、という職場も多いのではないでしょうか。
今回は上司が部下とのいい関係を作る、というテーマを考えてみます。

   🌸   🌸   🌸   🌸   🌸

部下世代は、概ね20代~30代前半と想定します。
いわゆる「ゆとり世代」が中心で、組織よりも個人を優先
する、という価値観です。アニメ漫画の「ワンピース」世代と呼ばれることもあります。
主人公ルフィが宝を求めて仲間と共に世界を冒険する物語
です。
「俺はおめエたちが助けてくれねエと生きていけねエ自信が
ある」、という仲間を大事にするリーダーです。

一方上司世代は、概ね40代~50代でしょうか。
アニメ漫画で「ガンダム」世代と呼ばれることもあります。
こちらは組織の秩序を重んじ、上下関係を重視するタテ型社会の価値観です。
個人を犠牲にしてまで組織を優先する傾向があります。

ステレオタイプな世代論に捉われる必要はありませんが、
上司としては、部下といえども多様な価値観を持っている、という認識を忘れてはいけません。

部下という社員をひとりの個人としてしっかり認めることから始めます。
コツは「部下を上下関係でみない」ことです。
社員の能力を引き出し、組織の業績向上に繋げることが管理者である上司の仕事なのですから。

「上下関係でみない」とはどういうことか。
具体的には、次のような態度を取ることです。

1)部下に向き合う。
部下は価値観は自分と少し違うかもしれないが、それでも構わない、と受け止めます。部下も人として悩みもあれば能力もちゃんと持っているのですから。
あなたは上司として部下にしっかり向き合って下さい。
やがていい関係が生まれます。信頼関係が築かれるからです。
向き合うためには、まず部下を一個の「ひと」として関心をもって接することです。個性をしっかり見てあげることが大事です。意外な「強み」が見つかるかもしれません。
相手の目を見てしっかり「聴く」ことから始めて下さい。

2)部下育成は上司の仕事
部下の強みを活かし、育てて実績を上げるのをサポートするのが管理職であるあなたの仕事です。部下は組織の大事な戦力です。部下の能力を伸ばし、成長させるのは上司であるあなたの大事な仕事です。
部下には様々な能力を備えているはずです。目標を達成するために必要な能力は、ひとつとは限りません。
自信を失っている部下を励まして、自分で得意なやり方を見つけ、伸ばしてやることです。
部下育成に必要なスキルは、いい質問をすることです。「質問力」を伸ばしましょう。

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部下を上下関係でみないで、ひとりの個人としてみることは、ちょっと訓練すればできるものです。むしろ管理職として組織を動かすために必要なコミュニケーション能力のひとつである、と考えて下さい。

管理職は威張っていないといけない、というのは誤解です。確かにひとを動かすにはある種の権威が必要です。しかし上司という権威だけに頼ってひとを動かそうとしても、うまくいきません。ひとを本当に動かすのは命令ではなく、本人の心からの納得感なのですから。

時間はかかるかもしれませんが、しっかり部下と向き合うこと。それを可能とするものは管理者自身の懐の深い「人間力」なのでしょう。

責任感を持ち、部下をしっかり支えてくれる上司に対し、リスペクトしない部下がいるはずはありません。

(2019.3.30)

参考:
『「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱』 
鈴木貴博 2011年 朝日新聞出版

「日日是好日」を読む

19-2-7立春F6
              立春 2019

 森下典子さんが二十歳に出会って以来二十年以上
続けてきた茶道について書かれた本です。

いきなり名言が出てきます。

・・・世の中には、「すぐわかるもの」と、
「すぐにはわからないもの」の二種類がある・・・

 すぐわかるものはいいけれど、すぐわからないものは、
時間を経て少しづつじわじわわかりだし、自分が見て
いたのは、全体のほんの断片にすぎなかったことに
気づく・・・

「お茶」って、そういうものだ、と言います。

グイっと「お茶」の世界に引き込まれます。

    *    *    *    *

 お茶は「形」から入り、心は後から入るものだ、と
先生は教えます。お辞儀の仕方、部屋に入るときの
足運び、お点前で茶器を使う所作・・・
すべてに細やかな作法があり、初心者は面食らうこと
ばかりです。

 人間を鋳型に入れる「形式主義」ではないか、と現代人
なら反発したくなります。
しかし、先生は「習うより慣れろ」「見て感じなさい」と
言うだけです。
 
 このあたり、禅の精神と通じるものがあります。
精神と肉体。無と有。
ひたすら精進した者だけが辿り着ける境地・・・

 スターウォーズでも老師が主人公ルークに教えます。
「目を閉じよ。そして感じよ」 
”be force with you”

 頭で考えることを止めてみる。
五感を研ぎ澄まして感じた先に、真に自由な世界が
広がっている・・・

    *    *    *    *

 お茶は自然と繋がっています。
お茶席で使われる茶器、茶室を飾る「茶花」、菓子は、
季節を映したものが使われます。

 何と優雅なことでしょう。お茶を愉しむのは、自然を
感じることに通じている、というわけです。

 自分の生活を振り返ると、いかに自然から離れた
生活をしていることか、と愕然となります。
 
 マンション暮らしでは、外の風の音、雨音も頑丈な
コンクリート壁に遮られて聞こえてきません。
 道端に生えている野の草花にも、もっと目を凝らし
たいものです。風のそよぎに、雲の形に、もっと季節を
感じてみたいものです。

 
 茶花のない季節などなかった。
 退屈な季節など、ひとつもなかった・・・・
 
 この言葉にハッとしました。
 季節のなかでも、冬は嫌いだ、などと思っていま
した。

 凍えるような冬の寒さのときも、降りしきる雨の日にも、
・・・どんな日も、その日を思う存分味わう。
「悪い天気」なんて存在しない。

 たとえ、「苦境」と呼ばれる事態に遭遇しても、
その状況を愉しんでしまう。どんな日も楽しんでしまう。
「日日是好日」
お茶とは、そういう生き方のようです。

    *    *    *    *

 初釜のとき、その年の干支をあしらったお茶碗を使う
そうです。ということは、次に同じ茶碗で飲むのは12年後。
前回飲んだのが12年前。
 お茶は季節を巡りながら、干支12年のサイクルを永遠に
巡り続けているのです。

 それに比べると人の一生は、何と儚げなことか

 お茶は、「もの」でありながら、人間に精神的なことを
教えてくれます。
「形式」でありながら、心の持ち方を教えてくれるのです。
 

 「日日是好日」を読み終えて、お茶にとても興味を惹かれ
ました。一度、落ち着いた茶室で、心ゆくまでお茶を楽しん
でみたい・・・
そんな気持ちになりました。

(2019.2.24)

参考
「日日是好日」森下典子 飛鳥新社2002年

ダイバーシティと外国人

19-1-18LiliesF6
           Lilies 2019

 最近町で外国人の姿を見ることが増えました。
服装などからみて観光客ではなく、この街に定住して
いる人たちです。
 現在定住外国人の数は256万人(2017年末)で、
毎年増加し続けているのです。

 こんなに増えていって、将来大丈夫なんだろうか、
とちょっと心配になります。短絡的ですが、数年前
ヨーロッパで頻発したテロなども頭をよぎります。

 「すべての不安は無知から起こる」。まずは知ること
から始めよう、という訳で今回は外国人問題について
調べてみました。

    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆

 昨年暮れに国会で出入国管理法改正案が可決され、
今後5年間で最大34万5千人の外国人労働者の受け入れ
が決まったことはご周知のとおりです。

 背景にあるのは日本社会の人口減少です。
2010年代の10年間で270万人の人口減の予測が、次の
2020年代には620万人減。更に2030年代には820万減
と大規模な人口減少予測が続きます。

 当然深刻な労働力不足が見込まれます。政府は労働力
不足への対応として、既に「働き方改革」の下で定年延長に
よるシニア社員の活用、育休、保育園など働く女性支援など
の政策を打ち出しています。
 今回の入国管理法改正は外国人労働力を「人手不足」の
補完に使う試みなのでしょう。

 日本はいよいよ「移民」国家に踏み切る時期にきているの
でしょうか?

    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆

 政府は「移民」という言葉を避けて「定住外国人」という
言い方をしています。実態は「移民」であるのに、公的に
はこれを認めていないのです。国民のなかにある「移民」
への抵抗感を恐れての政治的配慮かと思われます。
 政治的にはともかく、「移民」は本当に必要なのか、
という問題を考えなくてはなりません。

 海外の事情はどうなのでしょうか?
移民比率は日本では1.9%ですが、欧州をみると、ドイツ
12%、イギリス13%、フランス10%、ベルギー
16%、というように、軒並み総人口の1割を越えています。
スイスは何と27%という高さ!
(Eurostat2016年資料)

 「移民先進国」である欧州からみると、少子高齢化の先頭
を行きながら、「移民政策」に舵を切ろうとしない日本は
大丈夫か?と思われているようです。

    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆

 日本は島国なので世界から孤立しやすいことは確か
です。だからといって、日本人は閉鎖的な国民性である、と
いう議論には組しません。江戸の鎖国時代250年の影響は
否めないでしょう。
 しかしそれ以前の遣唐使船や戦国期の海外発展期のよう
に、日本人には冒険を求める開かれたDNAも存在するの
です。だからこそ、明治以降に急速な近代化を果たすことが
できたのではないでしょうか。
 
 今は、冷静に「移民政策」に踏み切ることのメリット、
デメリットを検討してみることが大切です。
 放っておくと2050年頃に日本の人口は1億を割り込む見
通しです。 今の生活レベルを落としたくないのであれば、
ある程度の移民受け入れは必要かもしれません。

 移民政策を取る場合のポイントは次の3つです。

1)「移民」受け入れる場合のルール作り。
  どのくらいの時間をかけて、どんな形態で受け入れるか
  摩擦を起こさない速度で、確実に受け入れていくこと
2)「外国文化」を受け入れる体制作り
  何のために受け入れるのか、についてのコンセンサスを
  地域レベルでのきめ細かい体制作り
3)ダイバーシティ教育
  外国人もひとりの個人。「ひと」として受け入れていく
  姿勢が大切。相手文化の尊重などまさにダイバーシティ

    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆

 全豪オープンで大阪なおみ選手が優勝し、ランキング
世界一になりました。相撲界、陸上などスポーツ選手にも
肌の色、国籍を超えた「日本人」が活躍しています。
 
 これからも身近なところで外国人を目にしたり接する
ことが増えてくることでしょう。
 私たちが暮らしていくうえで、何かが少しづつ変わって
いくことはある意味自然だと思います。今までだって
そうだったわけですから。  
 
 「ひとは感激に生き、保守に死す」
と言った明治期の日本人がいました。

 異質な文化、肌の色の違いに惑わされることなく、
積極的にいい所を見て取り入れていくことでこの国の歴史
は動き、文化は豊かになっていったのだ、と思います。
 元来「和の文化」とは、異質なものを上手に取り入れ
ながら新しいものを生み出す、という文化なのですから。 

 外国人だからといって好奇の目で見るのはほどほどに
して、同じ人間、ひととしてみることができるようになれば
いいな、と思います。
 こちらが色眼鏡を外して見れば、きっと相手のいい所が
見えてくることでしょう。

(2019.1.29)

参考:
「限界国家」 毛受敏浩 2017年 朝日新書