心地よい居場所(税所彰のコーチングエッセイ)

私はマネジメントの専門コーチ。人口減少時代の現代で心地よい居場所を探しながらエッセイを綴っています。コーチング、マネジメント、働き方・人材育成のこと、世の中との付き合い方などについて考えを深めたい方、年齢に関係なくヒントになれば幸いです。                                  

管理職の役割が変わった

20-4-23枝垂桜の公園

 脱工業化と人口減少が進むなかで、持続可能で豊かな社会を
いかに創造するか。これが日本社会の課題です。求められるのは
新しい仕組みを創り出す力、創造力。今日は企業や社会で「創造
力を備えた人材」をどうやって育成していくか、考えてみたいと
思います。

 新しい時代を創造すること。それはひとりのヒーローだけの力
で成し遂げられるものではありません。明治維新を成し遂げたの
は、坂本龍馬のような天才だけではありませんでした。様々な能力
や個性を持った人材が必要なのです。
 企業に於いて、多様な個性を持つ社員たちをひとつにまとめ、
ひとりひとりの能力を引き出していく所からアイデアと創造が生
まれます。
これを引き出すのが管理職、マネジャーの役目です。


 企業経営者に、貴社の最大の課題は?と聞くと「人材の育成」と
いう答えが返ってきます。しかし現実には日本の人材育成投資は
あまりなされていません。GDP比でいうと0.1%。米国2.1%、
ドイツ1.2%、フランス1.9%と比べても著しく低いのです。

 これから必要なのは、社員の能力を伸ばし、成果に繋げる能力を
持ったマネジャーなのです。
今までのような「ひとを管理する」マネジャーではなく、「ひとを
育てる」マネジャーが求められるのです。
管理職の役割が変わったのです。

(2021.4.27)

コーチングの未来(1)

ストーブ

 人口減少時代とコロナ禍がもたらす近未来の社会変化に対
して、コーチングができること、何が貢献できるか、につい
て考えてみたいと思います。
少し長いので3回に分けて掲載します。

1、未来は創造するもの

 現代は歴史的な転換点を迎えていると言われます。私たち
の社会は1950年代から始まる高度経済成長期に匹敵する、
少なくとも50年に一度程度の大きな社会的歴史的変化(パラ
ダイムシフト)を迎えるのかもしれません。

 高度経済成長期に起きた様々な社会変化を思い起こして
みると・・・、人口の急増、都市への人口大移動、急速な
工業化と環境問題、大企業サラリーマン社会の成立、進学
競争、大量生産と大量消費の時代・・・。人々の生活意識や
価値観、消費行動はそれまでと比べて様変わりでした。

 「高度経済縮小期」の近未来には、人口増減のベクトルは
正反対ですが、これに匹敵する大きな社会変化が起きること
が予想されます。 今年はこれにコロナ禍が加わり、「人と人
の分断」という困難を人類に突き付けています。

   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   

 コーチングは対話によってひとの自発性を引き出し、能力
を高める技能です。単なるスキルに過ぎないのですが、人口
が減少して「ひと」の価値が相対的に高まってくる今日、
そしてコロナ禍によって「人と人との分断」を余儀なくされ
ている現代において、コーチングの持つ可能性をもう一度
見直すことが有益ではないか。そう思うようになりました。

 コーチングはひとの存在を認め、ひとの可能性を信じ
ます。ひとの能力を引き出します。「人間力(=自己基盤)
という力でひとを分断から救い出し、温かく包むことが
できます。
「高度経済縮小期」、そしてコロナ禍の現代にあって、もし
未来を切り拓く力人間にあるとすれば、コーチングはその力
のひとつになり得るのではないか。
そんな風に考え始めています。

「未来は予想するものではない。創造するものである」

 ある賢者の言葉です。手を拱いて待つのでなく、勇気を
もって取り組んでみることが求められているのです。
 未来は既にそこまで来ています。

  未来にはどんな問題や課題があるのでしょうか。 それを
探るなかに、コーチングの果たすべき貢献の姿が現れて来る
はずです。
次章では未来の課題について具体的に探っていきます。

(2002.12.09)

コーチングの未来(2)

2003Aug窓辺

2、未来を拓くための課題

<生産性の課題>
 日本は十数年前から人口減少時代に突入しており、35年後
(2055年)には総人口が現在より3千万人近く減少して1億
人を割り込む予測です。労働力不足は顕在化しており、地方
では過疎化が進み、消費も伸び悩み、GDPの伸び率は低迷
しています。

 社会の豊かさ、つまり社会保障などの生活水準を現在の
レベルより落としたくなければ、今後の課題は一人当たりの
生産性を上げることしかありません。これが第一の課題
です。

<AIデジタル化と人材育成の課題>
 社会の生産性を上げる特効薬があります。業務・生産
プロセスの機械化=AIデジタル化です。その開発導入のため
に人材が必要なのですが、残念ながら日本は世界のAI技術
開発競争に出遅れており、深刻な人材不足に陥っています。

 今後10年は掛るという覚悟で長期的に人材を育成していく
ことが求められます。これが第二の課題です。それは企業内
研修というレベルではなく、広く社会全体の教育改革でなく
てはなりません。

 教育改革の目的は、単にAIデジタル技能やプログラミング
技能を学校教育に導入することに留まりません。より根本的
に、「考える人材」の育成、という点が重要です。
 これまでの教育は「知識」を教えること、でした。上から
の「指示通り」に動く質の高い人間を、大量に育成すること
が教育の目的でした。
 
 これは明治期の富国強兵から高度経済成長期までの
日本の根幹を支えた教育理念でした。
 しかしその旧来の理念が前提とした労働集約型の仕事や
事務作業は、将にAIやロボットが得意とする所なのです。
そのような仕事や業務は早晩機械が人間にとって代わる
ことでしょう。

 プログラミング技能などの理数系知識と同時に、人間性
に関わる知性、人文学系の教養をバランスよく備えた人材
を育成することが大切です。
 
<生産性と人間性のバランス>
 AIを駆使して生産性を上げていく戦略は、経済的な豊かさ
をもたらしてくれるでしょう。しかし気を付けないと人間性
を見失う危険があります。AIを制御しているつもりが、いつ
の間にかAIが人間を支配し始める危険です。

 そこで第三の課題として企業と社会において「生産性」と
「人間性」のバランスを取る、という課題を掲げたいと思います。
 これからは「AIに負けない」人材の育成が求められます。
AIが不得意なこと。感性、創造性、問題解決能力、といった
「人間性」の領域に関わる能力を鍛えることが大事になります。
 
 答えのない状況に直面しても、想像力を働かせて解決への
糸口を探り、新たな道を見出していく能力です。
そこに求められるのは、人間にとって快適なもの、という
条件です。
 人の気持ち、共感力などの感情はもとより、デザイン性、
機能性、芸術性、品格・・・などのような微妙な美意識と
繊細な感性が求められるのです。

   ◆    ◆    ◆    ◆    ◆

・・・という訳で未来を拓く課題とは、
1)生産性を上げること、
2)教育改革を実施して人材を育成すること
3)生産性と人間性のバランスを取ること
の3つが挙げられます。

 これらの課題を解くカギがコーチングにある、と申し上げ
たいのです。端的に申しますと、コーチングの力で「人間性
」を尊重しながら「生産性」を上げることができる、という
ことです。

次章はいよいよ本論です。コーチングが企業や社会でどの
ように人材育成に貢献できるか、について考えを進めて
いきます。

(2020.12.10)